平成29年度大和市さくら文芸祭「俳句の部」

更新日:2021年08月23日

平成29年度大和市さくら文芸祭「俳句の部」の受賞作品および審査員講評です。

審査員

梶原 美邦

最優秀賞 吉川 美智子

陽炎の根を掘っている道普請

野原に家が建つのか道を造る工事が行われている。太陽の光が屈折してちらちらと立ち上ると、向こう側の労働者の影が、その根を探し頻りに掘っている。

優秀賞 足立 陸子

霜柱ガラスの城を沓みにけり

地上に透明な柱状の森が出現している。誘惑に駆られ、バリッと靴底を鳴らした。靴跡に神の呪いの如く玻璃の城の幻影が立ち上る。ふと悔いが過った。

優秀賞 鹿沼 龍生

焼き芋屋やさしい声で遠ざかる

懐かしい声が聴こえてくる。薩摩芋の匂いがして、口の中にほっこりと味が滲んできた。車に駆け寄って買った。芋屋は前よりも優しい声で去って行った。

優秀賞 小林 莉子

シクラメン話しかけつつ水を遣る

幼児と母とお花の会話。この桃色の花はね。ギリシャから来たんだよ。そうなの。この白いのは。同じ。ねお花さん。さあ、ご飯上げよう。と話は尽きない。

優秀賞 高橋 眞也

父の膝とり合ふ子らや炉火明り

家族団欒の囲炉裏火。温まると安堵がやって来る。父親は膝を組んでいる。抱っこしてもらいたい二人の幼子が、競って膝を狙う。炉火の静寂が時々跳ねる

優秀賞 高橋 光男

柿干して人の住む家らしくなる

空家ができて、物騒な世の中になってきた。が、我が家も傍から見ると、無人の家に見えるかもしれない。久しぶりに柿簾を吊るし生きている家の証にしよう。

優秀賞 竹岡 美恵

獅子舞の目の奥の目のやさしけり

舞う獅子の口で噛みついてもらうと、神が付くと言う。泣き叫ぶ子の頭を差し出し厄を払う。獅子頭の怖い目の奥の方に舞い手の優しい眼が垣間見られた。

優秀賞 竹中 白房

はらからの揃うて見舞ふ春ごたつ

春に母の病も小康から、快方へと向かった。知らせを受け、姉妹は元気づけようと揃って、見舞う事にした。それを聞いた母親は朝から炬燵で待ち受けていた。

優秀賞 露木 君江

大佛の背の窓ひらく春隣

鎌倉の大佛の背には二つの扉がある。これは工事の時に土などを運び出す口だったが、今は大佛の暗い胎内巡りの照明や春が入って来る窓になっている。

優秀賞 古木 せつ子

漆黒の湿原ゆらり蛍かな

釧路湿原であろうか。とっても艶のある闇の中に入って行くと、今日生まれたばかりなのか、弱々しいが美しい魂ともいえる蛍が、遠近にゆらゆらしている。

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