令和元年度大和市さくら文芸祭「俳句の部」

更新日:2021年08月19日

令和元年度大和市さくら文芸祭「俳句の部」の受賞作品および審査員講評です。

審査員

梶原 美邦

最優秀賞 八木 せいじ

冬茜ボトルシップの中の凪

茜は赤根。根から採る染料。冬茜は冬夕焼。窓際の素敵なウイスキーの瓶の中に夕焼が忍び込んで、浮かぶ船を染めると、瓶の中の海が一面に凪いでいった。

優秀賞 釜谷 徹男

かわせみの値踏む浅瀬や鮒の影

翡翠が川へ突き出している古木の枝に停まっている。空飛ぶ宝石と言われている鳥。静けさの中で鋭い眼が獲物の品定めをしている。鮒が近づいてきた。

優秀賞 熊谷 うめ

海色に街の暮れゆく弥生尽

弥生はイヤオイ。ますます草木が生い茂るの意。三月、港町は海の明るさに、暮れなずむ。空に反射する藍色は、そのまま街を染め上げて、暮れてゆく。

優秀賞 坂野 光成

世論揺れ原発揺らす蜃気楼

地震に襲われる度に原子力発電所の放射能が心配になる。化石燃料も大気を汚染する。クリーンな風力がよい等と世間は蜃気楼の風景が揺れる様に揺れる。

優秀賞 志賀 久一

春疾風子ら追う声もちぎれ飛ぶ

西や南から吹く、強い風の中。親の心配げな声が追いかける。風がやむ間も子を追いかける声。子は面白がって逃げる。又、突然の風に声が千切れて飛んだ。

優秀賞 高橋 眞也

冴返る医師は一語の間をおきて

何処か気になる事があり、医師の診断を受けた。結果を述べる段になって、医師の口元に一瞬言葉が閊えた。全身に寒気が奔るのを感じて狼狽して終う。

優秀賞 露木 君江

冬銀河奥歯で砕く金平糖

冬空には先ず昴が、そしてオリオン星座が大気の澄みにすむ中、鋭く美しい光を放つ。口中の幾つも突起のある砂糖菓子を星にみとれて思わず奥歯で砕いた。

優秀賞 前田 久美子

里帰り障子まぶしき目覚めかな

故郷に帰った。実家は伝統的な建築様式で、外から雨戸、次が廊下、そして障子の部屋である。兄が雨戸を開けたのだろう。懐かしい障子の明るさに目覚めた

優秀賞 横山 裕

本殿にスプリンクラー神迎へ

陰暦十月一日に全国の神々は留守番を残して、出雲にゆく。運命や縁や天気等の会議をし、月末に帰るという。人間は環境を整え、丁重に「神迎へ」を行う。

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