令和4年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」
令和4年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」の受賞作品および審査員講評です。
審査員
山田 吉郎
最優秀賞 𠮷川 美智子
美しく老いたきものと幾度も合せ鏡を見入る笑顔で
美しく老いたいというさりげない述懐が、格調ある端正な歌の調べを伴ってうたわれ、読む者の心に沁みる。共感を覚える人の多い作品であろう。
優秀賞 井村 清美
孫たちはくっつき虫をつけあって歓声をあげ学校へ行く
子どもたちが明るい声をふりまき登校する姿が生き生きとうたわれている。くっつき虫は衣服につく草の実であろうか。上の句のリズムが楽しく快い。
優秀賞 遠藤 寛
膝までの深き畝間に凍る雪砕きつつ強く匂ふ葱抜く
冬畑で葱を抜く息づかいと、心のはずむような律動が鮮やかに伝わってくる。一首の言葉の運びと調べ、感覚の冴えもみごとで、熟達の作品である。
優秀賞 大矢 有朔
はじめての県大会での挨拶は暗記で心拍数が上がった
県大会の挨拶の大役をこなす作者の緊張感と心の高ぶりが生き生きとうたわれている。「暗記で心拍数が上がった」がその高揚感をみごとに伝えている。
優秀賞 高橋 悠乃(※高ははしご高)
ビオラ咲き積もる雪への憧れよ君と手つなぐ時を待ってる
「ビオラ咲き積もる雪への憧れよ」という上の句の季節の表現とリズムがみずみずしい。君への思慕の情と融け合い、印象深い一首となっている。
優秀賞 中田 勇
アスファルトひな鳥ヒヨと見渡して車の群れに羽毛ふるわす
ひな鳥の可憐な様子を詠んだ写生的な一首。下の句の「車の群れに羽毛ふるわす」が、いとおしみと哀感を伴い、作者の深いまなざしを感じさせる。
優秀賞 花野 真輝
強豪が県大会で魅せる技まるでいかつい大きな虎だ
観客を魅了する強豪の姿を個性的に捉えている。競技の種類は分からないが、「まるでいかつい大きな虎だ」が圧倒的な存在感をみごとに表現している。