令和2年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」
令和2年度大和市さくら文芸祭「短歌の部」の受賞作品および審査員講評です。
審査員
山田 吉郎
最優秀賞 石邉 綾子
かなしみは私だけではないのだと少し歪んだ満月の夜
"短歌表現に熟達した作者であろう。「歪んだ満月」という暗喩がうまく生かされている。 上の句から下の句への接続の仕方が、意外性もあり絶妙である。"
優秀賞 飛鳥 栄司
忘れ得ぬふるさと昭和を携えて祭囃子のあとの晴曇
昭和の時代へのノスタルジーを胸に抱いて現代を生きる感慨がしみじみと伝わる一首。「祭囃子のあとの晴雲」の表現に微妙な心の襞がのぞいている。
優秀賞 小川 理恵
「はんぶんこ」 言葉覚えて二歳児はみかん皮むき二人で食べる
「はんぶんこ」という幼い子の覚えたての言葉が、一首のなかでとても新鮮に感じられる。着眼がすばらしい。結句にもう一工夫があると申し分ないであろう。
優秀賞 高橋 敦子
読み返す文ありタンスの奥深く寂しい折の胸充たすべく
タンスの奥深くにしまった文をそっと取り出し読み返す情景が、何かドラマの一シーンのように浮かんでくる。寂しさの中のほのかなぬくもりが印象深い。
優秀賞 長谷部 誠一
まだ言葉芽生えぬ吾子に陽は注ぎ未来のことば蓄えている
わが子へのあたたかく、生き生きとしたまなざしが感じられ、読者の心を元気にするような一首である。リフレインの手法、快いリズムも効果的。
優秀賞 浜谷 マリヤム
六人が立候補した委員会あるか不明の修学旅行
コロナ禍の社会を反映した作であろう。クラスで修学旅行の係を決めているのであろうか。下の句の簡潔な表現が、若い人たちの心情をよく伝えている。