令和5年度大和市さくら文芸祭「川柳の部」
令和5年度大和市さくら文芸祭「川柳の部」の受賞作品および審査員講評です。
審査員
やまぐち 珠美
最優秀賞 はな
今朝のパン戦火の命紡ぐ糸
世界各地で戦火が収まる気配がありません。作者の朝食にパン。そのパンは、戦火に逃げ惑う人々には命をつなぐもの。下五「紡ぐ糸」に一縷の望み。
優秀賞 安藤 美佐子
退化する脳の歯止めへ不便益
「不便益」とは、手間のかかることに価値を見出す考え方。便利な世の中を斜めに見据えたところに、句の深みが出ました。脳の活性化に期待大です。
優秀賞 鈴木 雄三
半世紀つづく絆に妻のチョコ
金婚式を迎えたお二人の日々を、バレンタインのチョコレートで描きました。ありがとうを言い交すたび、お二人の絆がより強くなっていくことでしょう。
優秀賞 堀場 美知子
腹空かし彷徨っていただけの熊
民家や、山中の人を襲う熊が問題になりました。作者の視点は更に深いところにあります。熊は人の自然破壊ゆえに「彷徨っ」たのだと。「だけ」は寸鉄。
優秀賞 みえ
雨ふるな空も心もぬれるから
叫びともとれる上五は、実は深い願いの「ふるな」です。作者の空は大切な人の空にも、被災地や戦地の空にも続いています。心を掬いあげる一句です。
優秀賞 八木 せいじ
ハレの日の余韻にひたる夕間暮れ
特別な日の充足感を、一枚の写真のように描きました。光あふれる情景にいる作者へ、一日の幕引きの「夕間暮れ」。光と陰の織りなす人生の舞台。