認知症講演会を実施しました(令和8年9月17日)

更新日:2026年10月14日

認知症と共に歩むそれぞれの物語~「わたし」と「まち」をつなぐ糸~

令和8年9月17日(木曜日)、大和市文化創造拠点シリウス  メインホールにて、認知症講演会を開催し、400人を超える方々にご来場いただきました。

市では、令和3年9月に「大和市認知症1万人時代条例」を制定し、認知症とともに歩むまちを目指して積極的に施策を進めており、例年、認知症に関する正しい知識の普及啓発や理解を深めていただく機会として、講演会を実施しております。

第1部では、日本大学大学院総合社会情報研究科教授の北村 世都(きたむら せつ)氏を講師に迎え、『認知症と共に歩むそれぞれの物語~「わたし」と「まち」をつなぐ糸~』をテーマに基調講演を行いました。

第2部では、北村 世都氏とともに市内在住の認知症のある方やサポーターを交え、地域活動の様子や地域との繋がりなどについて、座談会を行いました。

第1部 基調講演

講師

北村 世都(きたむら せつ)氏

日本大学大学院 総合社会情報研究科 教授

専門分野:老年臨床心理学

  • 大学病院のもの忘れ外来などで心理職として認知症高齢者と家族の心理面接や心理検査、介護者講座の企画開催などを担当
  • 現在は、大学で教育に当たるほか、社会福祉法人、行政機関などで家族心理面接などを担う
  • 大和市では、平成29年から開始した認知症個別相談・介護者交流会で認知症の人を介護する家族などからの相談やカウンセリングを行う

(委員)

  • 東京都認知症施策推進会議委員
  • 大和市第10期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画審議委員会 審議委員

著書:「認知症の人の主観に迫る 真のパーソン・センタード・ケアを目指して」(共著)

テーマ

認知症と共に歩むそれぞれの物語~「わたし」と「まち」をつなぐ糸~

基調講演の様子
講演の概要

認知症の方、家族、地域住民の立場から、それぞれの経験や課題を共有し、認知症を通じて得られる「喪失と獲得」の物語を紐解く内容でした。

1. 認知症をめぐる3人の物語

認知症を「特別な人だけの問題」ではなく、誰にとっても身近なものとして捉えるために、3つの立場からの物語を紹介しました。
登場したのは、認知症の方、家族、そして地域住民です。

認知症の方の物語では、認知症になったことで、これまでの仕事や生活の一部を諦めざるを得なかった喪失感が語られました。一方で、「できないこと」だけでなく、「今できること」や「楽しいこと」に目を向けることで、新しい仲間との出会いや新たなつながりが生まれたことも紹介されました。認知症になったことで失ったものだけでなく、そこから得られた新しい経験や人との関係にも意味があることが示されました。

家族の物語では、認知症のある家族が少しずつ変化していく姿を見守る辛さや、介護によって生活や仕事に影響が出る現実が語られました。その一方で、介護を通じて家族との時間の大切さを改めて感じたり、これまで一人で抱え込んでいた人が「助けて」と声を上げることで周囲の支えに気づいたりするなど、家族自身にも変化や学びが生まれることが紹介されました。

地域住民の物語では、認知症に対して「どう接してよいか分からない」「自分も認知症になるのではないかと不安になる」といった戸惑いがあることが語られました。しかし、親しい友人が認知症になったことをきっかけに、これまでと変わらず笑い合い、一緒に時間を過ごせることを実感し、「認知症があっても、その人らしさは変わらない」という気づきにつながったことが紹介されました。

これらの物語を通して、認知症をめぐる経験は、最初は「喪失の物語」として始まることが多いものの、同時に「獲得の物語」にもなりうると語りました。認知症との関わり中で、新しい関係や気づき、成長の可能性があることが、この3人の物語から示されました。

2. 3人の物語は「3人の生涯発達の物語」

心理学の「SOC理論」(S:選択、O:最適化、C:補償)を紹介し、人は高齢になっても、また認知症があっても、工夫しながら成長し続けることができると説明しました。

まず「選択」とは、これまでと同じように何でも続けようとするのではなく、今の自分にとって大切なことや、続けたいことを選び直すことです。認知症の方の例では、以前は仕事として洋裁をしていた方が、仕事として続けることは難しくなっても、「自分が作りたいものを作る」という新しい目標に切り替えたことが紹介されました。家族についても、「いつでも完璧な介護をする」のではなく、「一緒にいる時間を穏やかに過ごすことを大切にする」といった形で目標を見直すことの大切さが語られました。

次に「最適化」とは、自分が今持っている力や得意なことを活かしながら、より良い形で生活や活動を続けることです。認知症があっても、長年身につけてきた技術や経験は生かせることがあります。また、家族も介護だけに追われるのではなく、自分の時間を持つことで気持ちに余裕が生まれ、結果として本人と穏やかに向き合えるようになる場合があります。今ある力を活かす視点が重要であると強調しました。

最後の「補償」とは、自分一人では難しい部分を、他者の支援や道具、環境の工夫によって補うことです。認知症の方が作業しやすいように工程を簡単にしたり、家族が介護サービスや周囲の支援を活用したりすることも、この補償にあたります。地域住民の例では、物忘れがあっても「みんなで助け合えばよい」と考えることが、安心して暮らしていく支えになることが示されました。

SOC理論を通して、年齢を重ねたり認知症になったりすることで失われるものがあっても、そこで成長や可能性が終わるわけではないと語りました。変化に応じて目標を選び直し、力を活かし、不足を補いながら生きていくことが、生涯にわたる成長につながるというメッセージが伝えられました。

3. ひとりひとりが自分の人生を生ききるための共生社会

認知症の方やその家族が生きづらさを感じる背景には、社会の仕組みが「多数派」を前提に作られていることがあると指摘しました。
たとえば、電車やバスのつり革の高さ、電話番号の桁数、暗証番号や日常生活のさまざまな仕組みは、多くの人にとって使いやすいように作られています。しかし、その一方で、身体的条件や認知機能の違いによっては使いにくさや困難を感じる人もいます。

認知症の方にとっては、「覚えていること」「スムーズに判断できること」が前提となっている社会の仕組みが、大きな負担になることがあります。また、その家族も、周囲に理解されにくい悩みや負担を抱えながら生活している場合があります。こうした現実を踏まえ、多数派の側が少しだけ視点を変え、配慮や声かけを行うことで、地域はもっと暮らしやすくなると語りました。

共生社会とは、特別な誰かだけを支える社会ではなく、誰もが人生のどこかで少数派になりうるという前提に立って、お互いに支え合える社会のことです。認知症は決して一部の人だけの問題ではなく、誰にでも起こりうる身近なものです。そのため、認知症のある人を「支えられる側」としてだけ見るのではなく、同じ地域で暮らす一人の市民として関わり合い、それぞれができる形で助け合うことが重要だと述べました。

また、認知症の方も、その家族も、地域住民も、それぞれが自分の人生を生きていることを忘れてはならないと強調しました。認知症の方だけが我慢するのでもなく、家族だけが自分の人生を犠牲にするのでもなく、市民だけが無理をするのでもない、無理のない範囲で支え合い、少しずつ譲り合える社会こそが大切だと語りました。

そのうえで、「自分自身も将来認知症になるかもしれない」という視点を持つことが、共生社会を考える第一歩だと述べました。認知症があっても安心して暮らし続けられる大和市を目指すために、一人ひとりが少しずつ理解を深め、できる範囲で助け合うことの大切さが呼びかけられました。

第2部 座談会

登壇者
  • 市内在住の認知症のある方1名
  • 活動をともにする仲間3名
  • 認知症コンシェルジュ1名
  • 北村 世都氏
  • 人生100年推進課職員1名
テーマ

「わたし」と「まち」をつなぐ糸

座談会の概要

認知症のある方の暮らしや地域活動について話し合い、認知症のある人もない人も支え合いながら共に生きる地域づくりの可能性が探られました。

1. 認知症ある方とサポーターの地域活動

座談会には、認知症当事者であるみさこさんと、認知症サポーターとして活動をともにするきよみさん、まさこさん、よしこさんと活動を支援する認知症コンシェルジュの5名が登壇しました。彼女らは、地域で活動する「みきまよ会」のメンバーとして、認知症のある人とない人がともに交流し、支え合う活動を行っています。

「みきまよ会」は、大和市が推進する認知症施策の1つである「チームオレンジ」の一環として結成されたグループで、認知症のある方の「やりたい」「始めたい」という気持ちに寄り添いながら、地域での活動をサポートすることを目的としています。同会では、裁縫やお茶会などを通じて、参加者同士が交流を深め、笑顔あふれる時間を共有しています。

みさこさんは、みきまよ会に参加することで「毎日が楽しくなり、元気をもらえる」と感じていると話しました。活動の中で初めて編み物に挑戦した際も、周囲のメンバーが親切に教えてくれたことで安心して取り組むことができたと語りました。さらに、会の中での交流や会話を通じて、日々の生活に楽しさを見出し、「参加することで明るい気持ちになれた」と感謝の気持ちを述べました。

認知症サポーターとして活動するきよみさんは、ペーパークラフトや編み物が趣味で、手作業を通じて認知症のある方と交流する楽しさを感じていると語りました。まさこさんは、「会の中で『本当に面白い人だね』と言われたことが、自分の新しい一面を発見するきっかけになった」と述べ、会の活動が自己肯定感を高める場にもなっていることを示しました。よしこさんは、自身の人生経験を活かしながら、会で活動することが、地域のつながりを深める貴重な機会になっていると話しました。

また、「みきまよ会」の活動では、編み物や手芸品などの制作だけでなく、お茶を飲みながら近況を話し合う時間も設けられています。メンバーは、笑顔で交流を楽しみながら、認知症のある人もない人も互いに支え合い、前向きな気持ちで過ごせる場となっています。活動を通じて、「友達ができた」「歳を重ねることに前向きになれた」「認知症へのネガティブなイメージが変わった」といった声が上がり、認知症のある方が地域で安心して暮らしながら活躍できる可能性を感じさせる内容となりました。

2. 北村氏のコメント

みきまよ会の活動を「地域のつながりが新たなつながりを生み、広がっていく」と評価し、認知症のある方が地域で活躍する可能性を示しました。また、「認知症があってもこれまでの活動を続けることが、地域の中での役割や生きがいを持ち続ける方法になる」と述べ、認知症のある人を支える地域社会の重要性を伝えました。

展示

ポスター展示

手工芸品販売

同日ホワイエでは、ポスター展示や座談会登壇者による手工芸品販売などを実施しました。

多くの人が足を運び、認知症のある方の自分らしさや、認知症と共に歩むための情報に触れていました。

認知症多職種協同研修 ※前日開催

前日サブホールでは認知症多職種協同研修を開催しました。

認知症ケアに携わる専門職をはじめ、認知症の方の地域生活を支える団体や企業、ボランティア、自治体職員など、あらゆる主体の方が参加しました。

 

 

参加者アンケート結果

この記事に関するお問合せ先

あんしん福祉部 人生100年推進課 認知症施策推進係
〒242-8601 大和市鶴間1-31-7 (保健福祉センター4階 案内図)
電話:046-260-5612

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