認知症予防 Q&A
どうすればもの忘れを予防できますか。
今のところ、これをすればもの忘れを予防できるという方法は、残念ですがありません。もの忘れは老化が一番の要因と言われていて、無くすことはできません。
ただ、少しでももの忘れを進まないようにしたい気持ちは、皆さんお持ちだと思います。バランスの良い食事や運動、活動的に日常生活を過ごすことで、もの忘れの進行予防につながる可能性はあります。また、楽しんで行える趣味や習慣などを持つことが重要と言われています。
おすすめの方法の1つとして、日記など、記録をつけることがあげられます。日記をつけることにより気持ちの整理が出来たり、思い出すことで脳を刺激する訓練になるなど、良い効果が得られます。家計簿やカレンダーにひと言を書き添える、携帯電話を利用したボイスメモなど、記録の方法は人それぞれです。
日記をつけるにしても、楽しく続けていくことが重要です。負担にならない方法を探してください
もの忘れに効果のある食べ物を教えてください。
肉、魚、野菜とバランスのいい食事が、もの忘れに効果があると言われています。
魚の中でも、青背の魚は良いと言われています。青背の魚に多く含まれる EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)には、神経細胞を保護する効果や動脈硬化を予防する効果があると言われています。
また、トマトに含まれるリコピンなど、緑黄色野菜には脳細胞や血管に害を与える活性酸素を取り除く、ポリフェノールが多く含まれています。
偏った食事を続けると必要な栄養が足りず、体の維持が難しくなります。もの忘れに効果がある食物をたくさん食べるのではなく、朝、昼、晩と3食バランスよく食べることを意識しましょう。
加えて、適度な運動も併せて行うと、さらに効果的です
お酒はもの忘れに良いと聞いたことがあります。
適量の飲酒は、もの忘れを予防する可能性があるという研究もあります。また、適量であれば、食欲を増したり血流を良くしたり、緊張をほぐしたりするなど、お酒には様々な効果があると言われています。
適量とは、日本酒であれば1合、25度の焼酎であれば3分の2合、ビールは中瓶1本、ワインはグラス2杯程度と言われています。
一方で、お酒は飲みすぎると認知症や高血圧、糖尿病など様々な病気を招きやすく、転倒する危険もありますので、持病がある方は必ず、主治医に飲酒量を確認してください。
また、お酒を飲めない方は、少量であっても、健康を損なう可能性が考えられます。健康に良いと言われていても、無理に飲む必要はありません。飲める方も適正な量を守って楽しみましょう。
よく噛むことがもの忘れの予防に良いと聞きました。本当でしょうか。
よく噛むことで、脳の血流が良くなると言われています。
歯の役割は、食べ物を噛むだけではありません。物を噛む行為は、顔や頭にかけて存在する筋肉を動かし、血管や脳神経、脳を刺激することが分かっています。
歯の本数が少なくても、入れ歯などを使用し、口の機能を維持することは大切です。食べる機能を維持、向上させることで、栄養状態の改善につながります。
加えて、バランスの良い食事をしっかり取ることは記憶力などの認知機能や生活機能の低下などを予防すると言われています。また、丈夫な歯と噛み合わせは、体のバランスを保つことに重要な役割があり、安定した歩行や転倒の予防につながります。
運動はもの忘れの予防に効果がありますか。
運動は、記憶力や判断力などの向上につながり、継続することはもの忘れの進行予防に良い効果があると言われています。
近年、筋肉を動かすことにより、脳に良い成分が作られ、心身に良い効果を与えることも分かりました。週に3回以上、1回20分から60分程度の有酸素運動が推奨されています。
有酸素運動にはウォーキング、水泳、自転車などがあります。活動量の低下を予防するために、有酸素運動に加え、スクワットなどの筋力トレーニングを行うことが重要です。また、ストレッチは筋肉や腱の柔軟性を高め、怪我や故障の予防や、筋肉の疲れをほぐす効果があります。運動の前後にストレッチを行い、効果的に運動を行いましょう。
また、運動を行いながら頭を使うと、脳の働きを活性化する効果があると言われています。ウォーキングや筋力トレーニングを行いながらしりとりをする、100から同じ数字を順々に引く計算をする、歌を歌うなど、方法はさまざまです。たまに間違う程度の難易度の問題であれば、より脳が刺激されます。
運動や人との交流がもの忘れ予防に良いと聞きましたが、テレビが好きでずっと見ています。テレビばかり見ていると、もの忘れは増えますか?
テレビを見ることだけでなく、テレビ+αの楽しみを見つけてみましょう。
テレビ鑑賞が趣味の方は多いと思います。もし、じっとテレビを見ていることが心配であれば、テレビを見ながら内容を書き留めたり、要点をまとめたりしてみてはいかがでしょうか。また、テレビだけでなくラジオ、新聞、本、インターネットで情報を集めて、要点をまとめてみるのも良いかもしれません。社会に関心を持つことは、とても良いことだと言われています。
また、長い時間、同じ姿勢で過ごすと、肩こりや足のむくみ、腰の痛みなどが出現する場合があります。CM の間にストレッチを行うなど、同じ姿勢で長時間、過ごさないように注意しましょう。
一日なにもしていないため、何か始めたいです。もの忘れに効果のある活動を教えてください。
現時点では、これをすればもの忘れが進まないと言われる決定的な予防方法や活動は、残念ながらありません。
ただ、好きな事や趣味を楽しむなど、活動的に日々の暮らしを行うことで、脳は活性化すると言われていますので、もの忘れの進行を遅らせる可能性があります。
昔やっていた趣味や、以前から興味のある活動はありませんか?ピアノや三味線などの楽器、絵画や書道などの芸術、写真撮影などの創作、園芸や家庭菜園など、多くの活動がありますので、この機会に始めてみてはいかがでしょうか。
ポイントは一つの活動に決めつけずに、様々なことに挑戦してみて、長く楽しんで続けられる活動を見つけることです。
是非ご自身に合った活動を見つけ、楽しんで取り組んでください。
脳トレやドリルなどはもの忘れに効果がありますか。
脳トレやドリルなどは、脳を活性化する方法にはなりますが、必ずもの忘れに効果があるとは限りません。
もの忘れの進行を遅らせるには、日常生活を活動的に楽しく過ごすことが大切です。
何才になっても学習することは良いと言われています。ですが、もの忘れが心配だからといって、好きでもないことを無理やり取り組むことは、逆効果と言われています。できないことで落ち込み、不安につながりやすく、より一層もの忘れが進んでしまいます。
計算や漢字ドリル、ナンプレなどのクイズが好きな方はぜひ行ってください。苦手な方や、実際にやってみて自分には合わないと感じた方は、別のことを探しましょう。何か一つにこだわらず、色々なことに挑戦して、自分に合ったものや、楽しめるものを見つけてください。
また、脳トレやドリルなどを行うのであれば、日々の生活の一部にして、継続して取り組んでください。
大切なのは、脳トレやドリルを行うことではなく、毎日を活動的に楽しく過ごすことです。
笑うことがもの忘れに良いと聞きましたが、本当でしょうか。
笑顔は健康に良く、脳を活性化させると言われています。
笑うことなどの心地よい刺激により、ドパミンなどの脳内ホルモンが分泌され、脳が活性化されると言われています。
しかし、日常生活において、声をあげて笑うことはないと思われる方もいるかもしれません。ただ、天気が良い、料理が上手くできた、テレビの内容が面白かったなど気持ちの良いことがあった時には、自分でも気づかないうちに笑顔になっているものです。
一方で、笑顔が良いと言われたからと、いつも無理に笑おうとするとストレスになるかもしれません。そういった場合は、時折意識して、口を横に開き、口角をあげて笑顔を作ってみてください。意識していると、自然と日常の表情に変化が出てくると考えられます。
夜にしっかり寝られず何度も起きます。寝ていないからかもの忘れが増えたような気がします。
睡眠不足は、集中力や記憶力の低下、疲れが取れないなどの原因になり、日常生活に支障が出てしまう可能性がありますので、十分な睡眠時間を確保する必要があります。
昼間起きて夜に寝るためには、体のリズムを正常にすることが重要です。例えば、夜が寝付けず昼間にうとうとしてしまうからと言って、昼寝を長くとりすぎると、今度は夜が寝られなくなるという悪循環になります。また、不規則な食生活は、生活リズムを崩しやすくなります。お酒を飲まれるのであれば、深酒も要注意です。
毎朝、起床時にカーテンや雨戸を開けて、朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に眠くなるリズムになります。また、一日 3 食、時間を決めて取ることや、昼寝をするのであれば 30 分程度に区切るなど、メリハリのある生活を取るようにすれば、リズムが整います。
他にも、自宅で役割を持ったり、趣味などの楽しみを見つけたりして、日中の活動時間を増やすことや、ストレスの対処法を見つけることで、寝られるようになる可能性があります。
人と話すことがもの忘れの予防に良いと聞きました。耳が聞こえづらく人と話すことが億劫です。
会話など、人とのコミュニケーションを楽しむことは、もの忘れの進行予防につながる可能性があると言われています。
一方で、難聴はもの忘れが進行する危険因子と言われています。耳が聞こえづらいと思ったら、年齢的に仕方がないと思わず、一度、耳鼻科咽喉科を受診してみてください。補聴器の使用など、難聴に対処し、聞こえる状態を維持することで、脳を活性化することにつながります。
音の刺激は、会話によるものだけではありません。外出した場合は、車や信号の音などがあります。自宅では、電話やテレビなど、さまざまな生活音が鳴っています。難聴のため、音の刺激や、脳に伝えられる情報量が少ない状態が続くと、脳が縮み、脳神経細胞が弱まると、研究で分かってきています。
また、コミュニケーションには、会って話すだけでなく、電話や手紙、メールなどの方法があります。人と話すことが億劫であれば、メールや手紙など、話す以外に関わる方法を利用しても良いのではないでしょうか。家族や友人とコミュニケーションを楽しんでいれば、もの忘れの進行を遅らせることができる可能性があると考えられます。
難聴のためコミュニケーションがうまくいかず、人との会話を避けるようになることで、抑うつ状態になったり、社会的に孤立してしまったりする可能性もあります。耳が聞こえづらく、聞き返しや聞き逃しがある場合は、一度医療機関への受診をご検討ください。、
人に会うことがもの忘れに効くと聞きましたが、人に会うことが好きではありません。
無理に会う必要はありません。人に会うこと以外でも、もの忘れの進行を遅らせることが期待されている方法は沢山あります。ご自身に合った方法を見つけることが重要です。
人と会って話すことで、脳が活性化されると言われています。人に会うためにおしゃれをしたり、お土産を選んだり、話すことを考えたりと、様々なやることが出来るので、考える=脳を使うことに繋がります。また、話すことでストレスも発散できるので、良いことが多くあります。
ですが、もともと人に会うことが好きではない、会いたい人がいない、という場合は無理に行う必要はありません。一人でも楽しめることを探しましょう。例えば、携帯電話やスマートフォン、パソコンでは、将棋、囲碁、オセロ、麻雀など様々な脳を使うゲームができますし、インターネットを使えば可愛い動物の映像など色々な動画を見ることもできます。その際、動画などにコメントをすれば、会わなくても人とつながることが出来ます。
また、会いたい人はいるけど近くにいなくて会うことができない、というのであれば、手紙やメール、電話などを利用するのも一つの手です。今はテレビ電話もありますので、会えなくても顔を見て話しをすることができます。
自分に合った方法を探して、楽しめることや社会とのつながりを作りましょう。
もの忘れについて、よくあるご質問を一問一答形式にしております。
こちらの内容はあくまでも回答例ですので、もの忘れが心配な方は、かかりつけ医や担当の地域包括支援センターへご相談ください。
市でも認知症に関する相談を、専用ダイヤル(認知症灯台 046-260-5641)で受け付けています。ご活用ください。
参考資料
- 『健康長寿ネット』 公益財団法人長寿科学振興財団 ホームページ(外部リンク)
- 『認知症サポーター育成ステップアップ講座用テキスト』 NPO法人地域ケア政策ネットワーク
- 『認知症を学び地域で支えよう』 NPO法人地域ケア政策ネットワーク
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会ホームページ(外部リンク)
- 公益財団法人 日本歯科医師会ホームページ(外部リンク)
更新日:2022年03月22日